私、山登りが素人であることは重々承知です。ささやかながら筑波山の男体山女体山それぞれに登ってみたり、小さな経験は積んでみましたが、なにぶん相手は日本一の山です。そんな付け焼き刃でどうにかなるような代物では無いでしょう。
ならば装備をそれなりに整える必要があります。立山のときにも同じように考えて、なるべく良い物を少しずつ揃えました。今回の新ギアは、ザックとスパッツです。ザックは前回までは普通のリュックでした。丈夫で容量も大きく一見問題なさそうなのですが、山用のザックは外側にポケットがいくつかあるんですよね。これ実際に運動しながら使う場合必須なのです。
スパッツは、女子のイメージするアレとは違います。や、だからあっちを「レギンス」と言い直したんでしょうか。別名ゲーター。さらに別名泥除け。ルーズソックスとか、戦うロボのように、靴の上からかぶせるように履くものです。富士山では必須だと言われています。後半そのパワーを思い知ることとなります。
さて。
前夜である22日に一路御殿場に向かいます。途中コンビニやドラッグストアで、買い忘れたものを補給します。バンテリン。ヴァームウォーター。エトセトラ。
水分補給が気になります。筑波で一リットルあっという間だったしなあ……。とはいえあんまり重いのも困ります。
スタートは、御殿場口。しかし近づくにつれ霧がどんどん濃くなって行きます。ナビがそろそろ左折だと言ってますが、曲がり角が見えません。マジで視界1メートル前後。かろうじて見える道路のガイドラインを頼りにそろそろと進みます。
駐車場を見つけることはできましたが、マジ見えない。どこが空いてるんだ。どんな構造なんだ。と、とにかく置けそうなところに置こう。一番奥が空いてるようだ。バックでなんて絶対無理。前から突っ込みます。
なんとか駐車してホッと一息。……えっと。おトイレ行きたいけど……。どこ? ってか歩けるのか?
幸いなことに少し時間が経つにつれ、目が慣れたのと霧が少し晴れたのとで、なんとなく見えてきました。500円で買ったヘッドライトを片手に持っ て、少し歩いてみます。上のほうで人の声がしました。階段を見つけたので登ってみると、プレハブなどが並ぶコーナーがありました。おトイレはそこから少し 離れたところに無事発見。いやしかし、夜中に行きたくなったとしたら遠いなあ……。結局夜中にもう一度行くはめになったんですが。
とにかく登山は体力勝負。充分な睡眠が必要です。というわけで、車の中でおやすみなさい。
明けて23日。着替え終えて、おトイレでも行こうかしらと準備していましたら、見知った顔が横切ります。おはようございます。ここから三々五々メンバーが集結して来ます。今回は8人のパーティです。もちろん一番とろいのが私です。
御殿場口に車を置いたものの、実はスタートはここではありません。ここがトリッキーなところですね。バスで水ヶ塚公園に移動し、更にバスを乗り継ぎ富士宮口に向かうのです。下山は御殿場口。そのまま車で移動できます。
富士山には、保全協力金制度があります。登山者に1,000円の負担をお願いして、それを環境整備に充てるわけですね。静岡県側では1,000円 と引き換えに、シールと缶バッジがもらえます。この缶バッジ、登山口ごとに色が違うのだそうです。私は実際に登る富士宮口でお支払いすることにしました が、他のみなさま、バッジもぬかりなく各色揃えるようです。山梨県側は木札というお話もありましてよ。
そして、この保全協力金集金のテーブルにスタンプがありました。「須山口登山道」と書かれたスタンプ。合わせて「富士山ぐるり旅手帖」なるものも 配布しています。いわばガイドブックですが、これがスタンプ帳にもなっています。世界遺産の構成遺産にスタンプがあるようですが……、やはり山頂にもある ようです。
御殿場駅からやってきたバスは、思ったより空いていました。suica使えるのか。まったく考えてなかったわ。座って水ヶ塚公園へ。ここで乗り換えです。
切符売場で買うバス切符は、紙の切符。素敵切符ですが、いろいろこの先入り用なもんで余分には買いません。あとで写真でも撮っておこうと思ったらわずか数歩歩いたところで、回収する係員がいます。なので慌ててちょっと待って! と言って写真だけ撮らせてもらいました。
バスは満車で補助席も出ています。マイカー規制の九十九折をぐいぐいと登っていきます。車内では注意事項のビデオが延々と流れていました。
さて、富士宮口に到着。お天気は曇り。山頂の天候情報も見ますが、雨は免れている模様。では決行です。
高山病を避けるために、高地順応が必要ですので、この登山口でしばし休憩します。メダルを買ったり、食堂で朝ごはん食べたり。イカすゆるキャラと写真撮ったり。入山届書いたり。指導センターにスタンプ見つけて押したり。
……さあ。いよいよ覚悟を決めて、参りましょうか。
23日10時8分ごろ。スタートです。
最初はどうしたって息が切れます。「山と食欲と私」にもありましたが、体内の隅々まで血がめぐるまでの時間です。15分から20分で行き渡り、身体が軽くなってくるはずです。
はずですが……、まあやっぱりしんどいわ……。
それでも割と早くに山小屋が見えてきました。六合目です。
ところで富士山の山小屋には、基本的にあまり記念スタンプはありません。その代わり金剛杖に押印する「焼印」が有料であります。知識として知ってはいたのですが、どうしても杖は大きく、既に片手にストックを持っていることもあり、ちょっと厳しいかなあ、ということで私は事前に買わない(やらない)ことに決めていました。
ところがこの六合目に、まさに押印専用とも言うべき小型の杖があるではありませんか……。大変に迷いましたが私は今回はやめておくことにします。他のみなさまご購入された方もいらっしゃるようです。
すぐとなりにも別の山小屋があり、別の焼印があります。あっという間に埋まっちゃいそうです。
六合目から富士宮登山道を離れて、皇太子殿下が富士登山に利用された通称「プリンスルート」と呼ばれるコースに進みます。これで先の御殿場ルートに向かうのです。プリンスルートは、宝永火口を経由するので、いわば横の移動となります。上下移動は最初のうちほとんど厳しくありません。道は細くあまり 使われていない感じがします。
そして後半……。
富士山登山案内のページにはこう書かれています。「プリンスルート攻略のコツは、宝永第一火口から宝永山馬の背までの滑りやすい砂礫の登り斜面で、いかに体力の消耗を防ぐかです。」
馬の背は遠くに見えています。そこを「く」の字のような形を描く登山道が見えています。ここまでの岩場とは違い、足場は完全に砂です。
これ、後でわかったのですが、いわゆる「大砂走り」を逆走しているようなものなのです。一歩で3メートル進むとまで言われる大砂走りを「登る」ということがどれだけしんどいか……。踏み出した一歩が完全に無駄になるのです。進まない。
体力もですが、心が折れそうになります。ただ、私達には経験がありました。立山の雪山登山がまさにこんな感じ。あの時もしんどかったけど、登り切ったではないか! (軽アイゼンあったけどw)
長かった。とても長かったですが、なんとか登り切り、御殿場ルートに合流します。大砂走りを少し横切ります。ものすごいスピードで駆け下りていく人たちが見えます。
登りルートは九十九折です。角、角で一休みしながら少しずつ少しずつ登ります。しばらくして、看板が見えました。山小屋の案内です。そして3,000メートルを超えます。おお。
しかし最初に到着した日の出館は休館中。がくー。
また少し頑張って登って「わらじ館」。中を覗いてみましたら山バッジがあります。しかも「わらじ館」の文字入りが。うっかり買います。こういうので気力を補充していくのです。あと小さなお餅を一つ購入。ゆべしのようなお餅で甘くて美味しい。
次の「砂走館」まではわずかです。こちらには山バッジは無いようです。
さらに次の「赤岩八合館」が今日の目的地です。じわりじわりと進むしかありません。8人ですが、だいたい5人と3人に分かれて進みます。私は遅い3人の方。ってか、私に合わせてあとの2人は来てくれてるのです。すみません……。
16時50分ごろ。
ついに「赤岩八合館」に到着です。6時間40分。コースタイムは4時間30分なので、倍まではかかりませんでした。
山小屋では靴とストックとスパッツを脱いで袋に入れ、自分の領域の天井から吊るします。寝床は二段ベッドのようでもあり、押入れのようでもあり。私達は下段で8人横に並んで寝ることになります。お布団は湿り気味。枕無し。大丈夫かなあ……。
すぐに晩ごはんです。カレー! カレー! 8人でカレー乾杯。美味しいっす。
晩ごはんの後、少し外に出てみました。
山小屋から雲海が見えます。雲よりもう上にいるんですね。夕日は山の反対側に沈んでいきますので、雲海に富士山の影が見えています。
なんという絶景なのでしょう。まさに疲れや苦労が吹き飛ぶ風景です。
とはいえ、本番は明日です。備えて早く寝ましょう。って、まさか18時から寝るとは。眠れるもんですね。
深夜、ご来光組のみなさんが出発していくのをぼんやりと見送ります。おトイレは外にあって面倒なのでなんとなく行きそびれます。枕はザックを使ってみたりポシェットを使ってみたりしましたがイマイチ。しかしピンとひらめきます。レインウェアを入れてあるケースがちょうどいいんじゃないかしら。これがビンゴで、随分と楽になりました。
朝、4時半頃。外が少しずつ明るくなっているようです。既に何人かのみなさんが外に出ています。寝すぎなのか酸欠なのか、少しくらっとする身体を起こして、外に出てみます。寒っ。
雲海と空の境界線がオレンジ色に光っています。昨日の雲海とはまた違う表情。私はあまりご来光にこだわりが無かったのですが……、一目見ようとい う人々の気持ちを理解しました。これは、すごい。ひときわ強いオレンジ色の光が地平線から顔を出します。おはようございます。今日が来ました。
うん、今のところ体調は悪くありません。枕が無かったことによる首の痛みが少しありますので、頭痛薬を早めに飲んでおきましょう。
朝食はあんまりもりもりと食べられませんが、ご飯とおかず少々いただきます。これが後の体力に繋がるのです。
さて。
24日6時20分ごろ、山小屋を出発いたします。なぜこの山小屋が「赤岩八合館」と呼ぶのかがわかってきました。ここから先の山肌や地面が、実際 赤いのです。明らかにここまでと砂礫の質が違います。上空には青空と沈みきっていない月が見えていて、まるで火星にいるような気分になります。
ここから先は、ただひたすらに九十九折です。その角ごとに休みながら、じわじわと進む……しかありません。おそらくあそこが頂上なんだろう、とい う場所は、最初から見えています。見えていますが、全然近づいてきません。小さなことからコツコツと……。登れ。少しでも前に進め。積み重ねればいつか は、着ける、はず!
頂上までのコースタイムは95分。じゃあ3時間だなあ、と見積もったのですが、それより少し早い9時ごろ、山頂の鳥居が見えてきました。ああ! ここが!
鳥居をくぐるといきなりそこに「富士山頂郵便局」があります。憧れの山頂局。さっそく入ります。スタンプ4種。まずは登頂証明書セットを購入し、 持参のハガキに風景印と和文印を。書いてきた暑中見舞いを二枚ほど投函。ポスト型はがきは残念ながら発売無し。あ、反対側の記帳台に別のスタンプ2種発 見。例のスタンプ帳用のスタンプもあります。
テンション上がりまくりです。し忘れたこと無いだろうかと気になりますが、先も気になります。
すぐ先に「浅間大社奥宮」があります。御朱印をいただきましょう。大小取り揃えてたくさんの御朱印がありますが、一番スタンダードタイプと、「丙申」の時だけのものがありますので、それぞれにお願いします。
もちろんお参りもいたします。でっかい神社にはでっかいお願いごとをするもんです。ぱんぱん。
授与品はなかなかシックなステッカーがあったので購入しました。
神社の向かいにお店があります。「2016富士頂上」の文字が入った山バッジと登頂証明書を買います。バッジに年号が入ってるとはなあ……。あ、下で買った茶平の記念メダルにも年号入ってるね、そういえば。
少し心が落ち着いたところで……、山頂を目指します。そうです、まだ山頂ではなかったのです。ひときわ目立つ高台に旧観測施設が残されており、そ こが山頂です。一旦緊張が途切れたのが災いしたのか、この上り坂がかなりの勾配で、厳しく、手すりを掴みながら少しずつ登ります。
最後は階段です。写真撮るための行列ができています。自分も撮りたいので我慢して並びます。そして、ついに……。
「日本最高峰富士山剣ケ峰」と書かれた石碑に手をかけました。来た。来れたなあ。一人じゃ絶対無理だったわ。みんなありがとう。せっかくですので8人の集合写真も撮ります。いえーい!
名残惜しいですが、順番がありますので、譲ります。それにしても廃墟マニア的にも心奪われる施設がたくさんあるのですね、富士山。
富士山山頂の火口がどうなっているのか、というのは今まで写真などで見て、知識としては知っていました。しかし、こうして生で見ると、本当に険しいというか、自然そのままむき出しなのですね。火口の底の部分も神社の一部であり、大内院(幽宮)と呼ばれています。もちろん立ち入り禁止です。
さて、帰り道のことがとても心配ではあるのですが、やはりお鉢巡りはしたい。というわけで、ここで、お鉢巡りする組としない組で一旦分かれます。私は、する組。ひ弱なのに……。
山頂の縁を歩いてめぐるわけですが、平坦というわけではありません。結構なアップダウンがあります。
ひいこら言いながら歩いていると、ひときわ賑やかな区画が見えてきました。吉田口のゴール部分です。ここに「久須志神社」があります。山頂のもう一つの神社(山梨県側)ですね。ここでももちろん御朱印を。超巨大な印も気になるけれど、スタンダードと丙申限定印を。
こちらには売店というか山小屋が四つも並んでるんですね。日本一高いところにある自動販売機もあります。コーラが500円。でも妥当でしょ。記念と実用を兼ねて買います。……このコーラのうまかったこと!
一番手前のお店で山バッジを見ていたら、「今日の日付刻印するよ」と声をかけられました。!? ならば買う買う。ちょろい客ですね、私。
次のお店では、茶平メダルの「山頂」バージョンを発見。しかし裏面にマグネットがついています。以前もそんなマグネットつきを買ったことがありま すが、ママちゃんにドライバー一閃で取ってもらったことがありまして。きっとこれも取れるだろうと購入いたします(ダメだったらまたママんとこ持ってい く)。
QRコードでもらえる登頂証明なんてものもあったね。もう一つのお店にてスタンプも発見しました。
そしてぐるりと最初のポイントまで戻ってきました。少し休憩しながら、お鉢めぐらなかった組と連絡をとってみましたら、間違えて富士宮口から降りちゃったって。おーい、大丈夫か。
私達は、予定通り御殿場口を下ることとします。12時15分ぐらいだったでしょうか。
ここに、生涯のうちにもう一度来ることあるかな。あるかもな。来てもいいな。
なにぶん重い身体ですので、重力に逆らわないとなると結構楽です。というわけで、登りほどは角ごとの休憩などは必要とせずに下っていきます。それでも滑ったり転びそうになったり。そういうところで体力が削られます。
どんどん下り、泊まった山小屋まで戻ってきました。あまり休むこともなく先に進みます。次の山小屋「砂走館」でお昼ごはんを食べることにします。 ラーメン。800円。サッポロ一番みそラーメンにハムと海苔が乗ってるだけ。だけど、これが……本当にうまいんです。あっという間に完食。
さあ、頑張って降りよう。日の出館跡を過ぎるといよいよ「大砂走り」が始まります。地面が砂礫ではなく黒い砂になり、一歩足を踏み入れると、下り坂と自分の重さでずずずっと前に進みます。一歩「3メートル」はさすがに大げさですが、普通に歩くより明らかに早い。動く歩道のようなものです。最初のうちは面白がってどんどん進むのですが……。やっぱり疲れは溜まるのです。休憩をはさみます。
天気が崩れつつあります。霧が深くなり、前を歩く人が見えないほどです。足元だけを見つつ、ずずっずずっと進みます。足がいよいよ痛くなってきました。マメももう潰れた感じ。
いくら早く下山できるとはいえ、御殿場コースは、この大砂走りが……長い。7キロあるんだそうですよ。さすがに途中しんどくて長めの休憩をとったりしつつ、ただひたすら下ります。うひー。霧も濃いし、トレイルランの人たちが猛スピードで駆け下りていくし、何しろ先が見えないというのがしんどかった わ。
御殿場口は地味なルートのため、先ほどの日の出館跡から駐車場近くの大石茶屋まで、まったく山小屋がありません。つまりおトイレも無いんだよ。後半ちょっとそろそろ、あ、あかん。行きたい……、となって無心に進んだりもいたしまして、なんとか大石茶屋に到着いたします。すぐにおトイレにダッシュ。 あぁぁぁ。
ここらで気が抜けたのでしょうね。お天気が霧から雨になりつつあったこともあり、駐車場に急ぎます。もうすぐだと思ってたけど、ここからまだ結構あったのよ。
最後の無い気力を振り絞りつつ歩きます。……ああ、見覚えのあるバス停が。ようやく駐車場に到着。17時15分ごろだったでしょうか。つまり、5時間。よく歩いたよ……。
車に倒れこむように乗り込み、靴を脱ぎ一息。そういえば、お鉢めぐらなかった組は? どうやらそのまま富士宮口を下山し、バスやタクシーで移動し、こちらにすでに到着しているようです。霧深い第三駐車場へ向かいます。また前が見えぬ。うろうろしてようやく発見。
富士宮口には、山小屋がたくさんあったようで、焼印がめっちゃ集まってる方がいらっしゃいます。……ケガの巧妙だ。いいなあ(笑)
さて、お風呂行きましょう。まず目指したのは、御胎内温泉。しかし町内のイベント関係とやらでやってません。がく。では、御殿場市温泉会館へ。第二駐車場から温泉までのわずかな道のりがつらいつらい。温泉に飛び込んだら、手の甲が痛い! 見れば真っ赤に焼けています。うわ、と思って各所チェックしましたら、鼻の頭と右肩のあたりと手の甲が火傷のように赤くなっています。特に強い太陽光線を浴びた記憶は無いのですが……さすがは日本一の高所です。
温泉の後はご飯。静岡県ではおなじみの五味八珍へ。浜松餃子も食べるよ。うまうま。
というわけで、解散! お疲れ様でした! みんながいたから登れました!
そして私は、翌日の仕事に備えて、御殿場市内に確保したホテルで即寝でした……。お疲れ様でございます。
24日6時20分ごろ、山小屋を出発いたします。なぜこの山小屋が「赤岩八合館」と呼ぶのかがわかってきました。ここから先の山肌や地面が、実際 赤いのです。明らかにここまでと砂礫の質が違います。上空には青空と沈みきっていない月が見えていて、まるで火星にいるような気分になります。
ここから先は、ただひたすらに九十九折です。その角ごとに休みながら、じわじわと進む……しかありません。おそらくあそこが頂上なんだろう、とい う場所は、最初から見えています。見えていますが、全然近づいてきません。小さなことからコツコツと……。登れ。少しでも前に進め。積み重ねればいつか は、着ける、はず!
頂上までのコースタイムは95分。じゃあ3時間だなあ、と見積もったのですが、それより少し早い9時ごろ、山頂の鳥居が見えてきました。ああ! ここが!
鳥居をくぐるといきなりそこに「富士山頂郵便局」があります。憧れの山頂局。さっそく入ります。スタンプ4種。まずは登頂証明書セットを購入し、 持参のハガキに風景印と和文印を。書いてきた暑中見舞いを二枚ほど投函。ポスト型はがきは残念ながら発売無し。あ、反対側の記帳台に別のスタンプ2種発 見。例のスタンプ帳用のスタンプもあります。
テンション上がりまくりです。し忘れたこと無いだろうかと気になりますが、先も気になります。
すぐ先に「浅間大社奥宮」があります。御朱印をいただきましょう。大小取り揃えてたくさんの御朱印がありますが、一番スタンダードタイプと、「丙申」の時だけのものがありますので、それぞれにお願いします。
もちろんお参りもいたします。でっかい神社にはでっかいお願いごとをするもんです。ぱんぱん。
授与品はなかなかシックなステッカーがあったので購入しました。
神社の向かいにお店があります。「2016富士頂上」の文字が入った山バッジと登頂証明書を買います。バッジに年号が入ってるとはなあ……。あ、下で買った茶平の記念メダルにも年号入ってるね、そういえば。
少し心が落ち着いたところで……、山頂を目指します。そうです、まだ山頂ではなかったのです。ひときわ目立つ高台に旧観測施設が残されており、そ こが山頂です。一旦緊張が途切れたのが災いしたのか、この上り坂がかなりの勾配で、厳しく、手すりを掴みながら少しずつ登ります。
最後は階段です。写真撮るための行列ができています。自分も撮りたいので我慢して並びます。そして、ついに……。
「日本最高峰富士山剣ケ峰」と書かれた石碑に手をかけました。来た。来れたなあ。一人じゃ絶対無理だったわ。みんなありがとう。せっかくですので8人の集合写真も撮ります。いえーい!
名残惜しいですが、順番がありますので、譲ります。それにしても廃墟マニア的にも心奪われる施設がたくさんあるのですね、富士山。
富士山山頂の火口がどうなっているのか、というのは今まで写真などで見て、知識としては知っていました。しかし、こうして生で見ると、本当に険しいというか、自然そのままむき出しなのですね。火口の底の部分も神社の一部であり、大内院(幽宮)と呼ばれています。もちろん立ち入り禁止です。
さて、帰り道のことがとても心配ではあるのですが、やはりお鉢巡りはしたい。というわけで、ここで、お鉢巡りする組としない組で一旦分かれます。私は、する組。ひ弱なのに……。
山頂の縁を歩いてめぐるわけですが、平坦というわけではありません。結構なアップダウンがあります。
ひいこら言いながら歩いていると、ひときわ賑やかな区画が見えてきました。吉田口のゴール部分です。ここに「久須志神社」があります。山頂のもう一つの神社(山梨県側)ですね。ここでももちろん御朱印を。超巨大な印も気になるけれど、スタンダードと丙申限定印を。
こちらには売店というか山小屋が四つも並んでるんですね。日本一高いところにある自動販売機もあります。コーラが500円。でも妥当でしょ。記念と実用を兼ねて買います。……このコーラのうまかったこと!
一番手前のお店で山バッジを見ていたら、「今日の日付刻印するよ」と声をかけられました。!? ならば買う買う。ちょろい客ですね、私。
次のお店では、茶平メダルの「山頂」バージョンを発見。しかし裏面にマグネットがついています。以前もそんなマグネットつきを買ったことがありま すが、ママちゃんにドライバー一閃で取ってもらったことがありまして。きっとこれも取れるだろうと購入いたします(ダメだったらまたママんとこ持ってい く)。
QRコードでもらえる登頂証明なんてものもあったね。もう一つのお店にてスタンプも発見しました。
そしてぐるりと最初のポイントまで戻ってきました。少し休憩しながら、お鉢めぐらなかった組と連絡をとってみましたら、間違えて富士宮口から降りちゃったって。おーい、大丈夫か。
私達は、予定通り御殿場口を下ることとします。12時15分ぐらいだったでしょうか。
ここに、生涯のうちにもう一度来ることあるかな。あるかもな。来てもいいな。
なにぶん重い身体ですので、重力に逆らわないとなると結構楽です。というわけで、登りほどは角ごとの休憩などは必要とせずに下っていきます。それでも滑ったり転びそうになったり。そういうところで体力が削られます。
どんどん下り、泊まった山小屋まで戻ってきました。あまり休むこともなく先に進みます。次の山小屋「砂走館」でお昼ごはんを食べることにします。 ラーメン。800円。サッポロ一番みそラーメンにハムと海苔が乗ってるだけ。だけど、これが……本当にうまいんです。あっという間に完食。
さあ、頑張って降りよう。日の出館跡を過ぎるといよいよ「大砂走り」が始まります。地面が砂礫ではなく黒い砂になり、一歩足を踏み入れると、下り坂と自分の重さでずずずっと前に進みます。一歩「3メートル」はさすがに大げさですが、普通に歩くより明らかに早い。動く歩道のようなものです。最初のうちは面白がってどんどん進むのですが……。やっぱり疲れは溜まるのです。休憩をはさみます。
天気が崩れつつあります。霧が深くなり、前を歩く人が見えないほどです。足元だけを見つつ、ずずっずずっと進みます。足がいよいよ痛くなってきました。マメももう潰れた感じ。
いくら早く下山できるとはいえ、御殿場コースは、この大砂走りが……長い。7キロあるんだそうですよ。さすがに途中しんどくて長めの休憩をとったりしつつ、ただひたすら下ります。うひー。霧も濃いし、トレイルランの人たちが猛スピードで駆け下りていくし、何しろ先が見えないというのがしんどかった わ。
御殿場口は地味なルートのため、先ほどの日の出館跡から駐車場近くの大石茶屋まで、まったく山小屋がありません。つまりおトイレも無いんだよ。後半ちょっとそろそろ、あ、あかん。行きたい……、となって無心に進んだりもいたしまして、なんとか大石茶屋に到着いたします。すぐにおトイレにダッシュ。 あぁぁぁ。
ここらで気が抜けたのでしょうね。お天気が霧から雨になりつつあったこともあり、駐車場に急ぎます。もうすぐだと思ってたけど、ここからまだ結構あったのよ。
最後の無い気力を振り絞りつつ歩きます。……ああ、見覚えのあるバス停が。ようやく駐車場に到着。17時15分ごろだったでしょうか。つまり、5時間。よく歩いたよ……。
車に倒れこむように乗り込み、靴を脱ぎ一息。そういえば、お鉢めぐらなかった組は? どうやらそのまま富士宮口を下山し、バスやタクシーで移動し、こちらにすでに到着しているようです。霧深い第三駐車場へ向かいます。また前が見えぬ。うろうろしてようやく発見。
富士宮口には、山小屋がたくさんあったようで、焼印がめっちゃ集まってる方がいらっしゃいます。……ケガの巧妙だ。いいなあ(笑)
さて、お風呂行きましょう。まず目指したのは、御胎内温泉。しかし町内のイベント関係とやらでやってません。がく。では、御殿場市温泉会館へ。第二駐車場から温泉までのわずかな道のりがつらいつらい。温泉に飛び込んだら、手の甲が痛い! 見れば真っ赤に焼けています。うわ、と思って各所チェックしましたら、鼻の頭と右肩のあたりと手の甲が火傷のように赤くなっています。特に強い太陽光線を浴びた記憶は無いのですが……さすがは日本一の高所です。
温泉の後はご飯。静岡県ではおなじみの五味八珍へ。浜松餃子も食べるよ。うまうま。
というわけで、解散! お疲れ様でした! みんながいたから登れました!
そして私は、翌日の仕事に備えて、御殿場市内に確保したホテルで即寝でした……。お疲れ様でございます。
0 件のコメント:
コメントを投稿